月の裏側

行き場を無くした思考の末路

覚悟は蒼く燐光放つ

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🌑 Behind Moon Archives 

(2018/6/11-7/8)

 

 

 

 

 

『虹行程』と名打って少しの無茶をしつつ参加した3rdライブ埼玉公演は無事に終わり、僕はライブの熱を原動力として日々を走っていた。

 

新しい職場は僕の心を冷やさない。

出勤する際に内臓がささくれ立つ感覚を抱かなくて済むというだけで、僕には信じられないレベルのアドバンテージだ。

そこにライブの熱が加わった事で、僕は一直線に走ることが出来た。

 

仕事はまだ不慣れだけど、ほんの少しずつ手応えが良くなっている感覚があった。

直属の先輩も「ゆっくり慣れてきゃ良いよ」と言って見守ってくれているし、再起にはこの上ない環境に恵まれたようだ。

日常に潜むストレスは、先日のライブから受け取った熱で全部焼き払えた。

ライブの楽しかった記憶を胸に宿したまま日常を走るというのは、本当に楽しくて。

Aqoursがこの胸に宿っているようだった。

 

(それにしても、金沢公演かぁ……)

 

図面のチェックをしながら、僕は先日LVで参加した大阪公演で告知された瞬間の感覚を思い返していた。

スクリーンに「金沢」と表示されたあの瞬間の盛り上がりは忘れられない。

映画館が爆発するみたいに沸き立っていた。

 

ずっと石川に住んでいる友人曰く、μ'sの頃から地元での公演は一度も無かったらしい。

それは嬉しいだろうなと思う。

越してきてそんなに経っていない僕も、一緒になってつい喜んでしまった。

これをきっかけに色々な人が石川に来ると思うと嬉しさが湧いてくる。

これは来年まで死ねないな、なんて話しつつ期待を膨らませていた。

 

3rdが終われば4thが始まり、同時期にユニット対抗のファンミーティングも始まる。

楽しいことが次々と予定されている今の、なんと幸せなことだろう。

図面をまとめ、席に戻る。

あの頃は1秒だって早く抜け出したくて嫌だった残業も、今は資金源として積極的に行うようになっていた。

 

(次は福岡だし、稼いどかないと)

 

思い返す。

流石に福岡は遠過ぎると思って応募しなかった福岡公演に、友人は知らぬ間に応募していた。

流石に2日目は日程的に無理があるものの、1日目は飛行機を使えば余裕で行けるーー当選をLINEで報告してきた友人はそのまま、あっという間に飛行機とホテルのパックを予約したのだった。

 

最初は無茶だと思ったが、価格にさえ目を瞑れば夜行バスで直行して出勤するよりは遥かに余裕のある行程だ。

それに、最終公演を現地で見たいという欲は僕にも勿論あった。

だから、友人の誘いは勿論快諾した。

 

福岡には行ったことがないし、2ndライブの記憶から期間を空けて開催されるツアーファイナルはセットリストや演出の変更が行われると予測できる為、開催が近づくに従って僕は福岡公演が楽しみになっていた。

 

ただ、この頃からだったと思う。

1つ、僕の頭を大いに悩ませる問題が取り上げられるようになった。

 

WATER BLUE NEW WORLD前のカウントアップで、「10」というか否かという話だ。

 

 

 

 

 

🥚

 

 

 

 

 

正確な発端は分からないが、大阪公演の後くらいからこの議論をよく目にするようになった記憶がある。

そして、この議題に対して「言わない」という意見が存外に多かった記憶も。

僕が今まで意見が合う、参考になると思っていた人の大半が「言わない」という意見に賛同し、その論拠を語っていた。

 

円陣はそもそも神聖なものである、とする意見であったり、ステージと観客との間にある明確な線引きの存在とその意義を提示する意見。

また、アニメーションの演出として「10」を発言する浦の星の生徒がいないのだからあそこは9人だけの場面であるとする意見もあった。

 

今まで頻繁に意見を参考にさせて貰っていた人達の言うことだけあって、読めば理解出来るもの、反論出来ないものが殆どで。

ただ、心のどこかにすごく引っかかるものがあった。

理屈の上では「言うべきでない」と理解したつもりでも、それを飲み込もうとすると酷く苦しかった。

 

挙句『あの場面で「10」を言う人間は分かっていない、無礼な人である』とも取れる内容の発言をTwitter等で見かけてしまったこともあって、僕にはそれが受け入れられなかったし悔しかった。

「分かっていない」「無礼だ」と言われても、僕は結局それらしい反論を構築できなかったからだ。

胸中にあるものを言葉にできていないという事実が、ただただ苦しかった。

 

あの場面で「10」と言うのは間違っているのだろうか。身の程知らずで、無礼な行為なのか。

飛び交う意見を見ているとそう考えてしまう自分と、それは違うと感じる自分がいる。

今までならこういう時に意見を参考にさせてもらっていた人達はみんな意見が違い、自分で考える他ない。

 

「10」と言うか言わないかというのは、人によってはどうでもいい問題に感じる人もいるだろうが、僕にとっては極めて大事な問題だった。

僕にとっては、自分が10人目だという感覚はずっと持っていたもので、それが熱の元にもなっていた。

それに、その映像の後に来る曲は大好きなあの曲だから。

だから、ちゃんと考えて、納得のいく答えを出してライブに臨みたかった。

 

 

 

 

 

🐣 

 

 

 

 

 

まず、何故「10」と言う行為を否定されるとここまで嫌な気持ちになるのか考えた。

理屈の通った、それもある程度以上信頼している人の意見であれば自分の考えと違っても普通は聞き入れられる筈だ。

なのに見ただけで心が傷つくと言うことは、何かしらその意見によって僕の大事な部分を否定されているということだろう。

 

その”大事な部分”の正体はきっと、自分がAqoursを追いかけてきた時間のことだろうと思った。

僕は、Aqoursを知ってしばらくした頃に心を病んだ。

職場にいるだけなのにただ呼吸することすら苦しい感覚に苛まれて、そんな中で7ヶ月生き延びた。

 

その時、僕はAqoursの姿と声と歌に支えられたのだ。

少々オーバーな言い方になるかもしれないが、Aqoursだけが僕を助けてくれた。

人にはそう簡単に言えない深層心理に潜む苦痛や嘆きを、あの人たちはそっと掬い上げてくれた。

急激な勢いで冷えていく精神に、Aqoursの熱を注ぎ込み。

ひび割れた心をファンのブログやツイートから伝わる「好き」で繋いで。

目以外全部死んでいるボロボロの心身で、死に物狂いで走る。

 

そうやって僕はAqoursに接してきた。

かなり過剰な感情移入をして、実際に生き方の指針をAqoursに寄せて、受け取った熱の存在を証明する為に生きていた。

だから線引きするべきとか身を引くべきとか、弁えるべきとか部外者だからという意見を見てそれを飲み込もうとすると、その頃の自分を全部否定することになってしまう。

だって、あの頃の僕は一緒に走って戦っている気持ちでいたから。

あの1年近くの時間と感情の全てが傲慢で無礼な勘違いだったと認めるのは、ひどく苦しくて許容しがたい行為だった。

 

しかし同時に、「そうだったのかもしれない」という思考も湧いてくる。

考えてみれば、勝手に共感して勝手に影響されて、それでやったことといえば何とか休まず働いたということだけだ。

普通の人間ならそもそも出来ていることを辛うじて達成して、それで何かを成し遂げたつもりになっている僕は滑稽で横暴な生き物なのではないだろうか。

勝手に一緒に走ったつもりになっているけれど、それは僕が張り巡らせたただの都合の良い妄想に過ぎないのでは。

目を通じて入ってくる「言うべきでない」という意見が心の中で形を変え、僕を何度も切りつける。

 

結局、お前が走った1年近くなど、大したものではなかったのだと。

 

だって、その時ひび割れた僕の心を繋いでくれた言葉を紡いだのと同じ人すらそう言っているのだから。

 

じゃあ、やっぱり言うべきではないのかなーーと、そこまで思考が落ち込んだ頃だったと思う。

ある人のキャスを聞く機会があった。

その人は僕の観測する範囲では珍しく、「10」と言うべきと主張している人だった。

  

 

「あの9人っていうのはその、ステージで歌って踊るっていう役割を持ってる人であって、それ以外の役割の人っていうのがいる訳ですよ。それはまあ応援しか出来ないのかも知れないけど、でもそれもやっぱり同じ気持ちを持った仲間だと思うんで……っていうのがやっぱり”10人目”だと思うんすよね」

 

「あそこに、作中ではその10人目ーー他の浦の星の生徒たちっていうのはあそこにはいない訳ですよね。いないんだけど、でも僕らは見てる訳じゃないですか。僕らはあそこにいるというか見てるんですよね。その時の自分が何者なのかっていうことなんですよ。それを聞きたくて僕は。誰としてあそこを見てるんだっていう。見てるだけの人なのか。お前は誰なんだって話なんですよ」

 

「そこでやっぱ視聴者も決意を固めるシーンだって思うんすよね。であれば「10」って言っていいんじゃないかなって思うんすよね僕は」

 

「同じラインにいるかっつったらね、まあ実際は違うのかもしれないけど、いや違うんだけど。だけど、でもそこで『いや俺は10人目なんだ、俺は同じラインにいるぜ』っていうくらいの図々しさを見せるっていうことが僕は大事だと思ってるんで、僕は図々しく「10」って言うぞっていう気持ちですね」 

 

 

彼の言葉は抵抗なく、優しく耳に浸透してきた。

心の中で渦巻いて出口を探していた感情が、その言葉に掬われていく。

 

そして、思い出した。

何故、”Aqoursだけ”だったのかを。

どうして、他でもないAqoursだけが色付いて見えたのか、はっきりと耳に聴こえたのか、その理由を。

 

同じ場所を走っていたからだ。

大過ぎる先人の影に覆われた世界で自分達の色や形を探して格闘する、現実のAqoursも。

無情に夢や希望を打ち砕いていく現実と対峙し、それでも尚前へと進むアニメのAqoursも。

決して天上の人ではなかった。

僕が直面しているものと同質な困難の中で、彼女たちは腐らず前へ走っていた。

ありふれた苦痛に満ちる現実の中で、何度も傷つき挫折して、それでも立ち上がって笑い飛ばす。

泥にまみれて尚現実を走り続ける、そんな人たちだった。

 

だから、泥の底で潰れそうだった僕にも声が聴こえた。

だから、薄汚れて濁ったこの視界にもはっきりとその姿を捉えられた。

だから、自分も立ち上がって走ろうと思えた。無様だろうがなんだろうが、生きて、走り続けてやろうと。

馬鹿馬鹿しい妄想だって思うかもしれないけど、あの瞬間間違いなく僕の方に手が差し伸べられていたんだ。

思考を止めて腐ろうとする僕の手を、痛くても苦しくても立ち上がって走れって、引っ張ってくれたんだ。

 

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勿論、並び立てた覚えなんてない。

でも、遥か後ろから覚束ない足取りだったとしても、僕は同じ道を走り続けてきた。

同じように走る人にも沢山会って、その人たちにも何度も助けられて、そうして今ここにいる。

勿論ステージに立ったわけでもないし、同じくらい偉大なことを成した訳じゃない。

でも、そうやってAqoursから受け取ったものを活かして現実と戦い続けることは、10人目としてAqoursを応援することだと言えるんじゃないのか。

Aqoursの本質は、”常に何かに挑戦する者”の筈だ。

であれば、彼女たちに影響を受けて大なり小なり何かに挑戦しようとする、ないしし続けようとする人間がいたなら、それは堂々と10人目を名乗って然るべきだ。

 

それでも自分には烏滸がましいとか、相応しくないと思うなら。

その「相応しくない」と思う部分こそ、向き合って解決するべきポイントなのだと思う。

そこに向き合って、それをいずれ解決しようと心に決めたらもうその時点で10人目を名乗る権利はあると言えるだろう。

 

歩道橋でのカウントアップは、決勝に向けてそれぞれがそれぞれの「勝ちたい」に向き合い決意と共に最終決戦へと飛翔するカウントアップだ。

そして、それを僕は見ている。

だったら、僕はやっぱり「10」と言おう。

 

この後の人生でも、何かに挑戦し続ける、前へ走り続けるという決意。

自分の弱さに流されそうになっても、常に10人目を名乗るに相応しい自分であるよう努力し続けるという自戒。

そんな、決意と戒めのカウントアップを。

図々しくやりきってやろう。

 

 

 

 

 

🐥

 

 

 

 

 

マリンメッセ福岡にて、ブレードの点灯を確認しながら振り返る。

考えて考えてようやく答えに辿り着いたのは、ライブのおよそ1週間前くらいだった。

考え悩む時間は苦しかったが、その分手にした答えは光って見える。

自分の中で言葉に出来ていなかった思考が形になり、とてもすっきりとした気分だった。

 

ぐるりと客席を見渡す。

マリンメッセ福岡は四角い会場だ。

四角く並んだペンライトの海は、所々穴がある。

よりによって丁度福岡公演に被る形で災害レベルの台風が到来したせいか、客席は少し疎らだった。

 

(……ツアーファイナル、か)

 

思い返せば、強行軍で参加した埼玉公演から始まったこのツアーもこれで最後。

随分と自分を変えるきっかけに満ちたツアーだったと思う。

埼玉公演も、悩んだ時間も。

そしてきっと、この福岡公演もそんなきっかけになる。

そんな気がした。

 

(……言うぞ、絶対に)

 

改めて、自分に告げる。

会場に着いて、少し怖気付いている自分に檄を飛ばす。

言うんだ。言うって決めたんだ。

絶対に言う。言って、完全に透き通った心であの曲を受け止める。

 

そうこうしている内に照明が落ち、OP映像が流れ始める。

3ヶ所を巡り、途中にL.A.でのライブも挟んだ激動のライブツアーはこの地が最後。

そして、僕が現地で観れる3rdライブツアーはこの公演が最後だ。

五感を開き、受け止める準備。

 

映像が終わり、彼女たちが現れる。

未来の僕らは知ってるよ』で幕を切り、福岡公演1日目が始まった。

 

 

 

相変わらず、Aqoursのライブは熱量が凄い。

自然と胸が熱くなり、全身が活性化する。

アニメ2期の物語の力を乗せた楽曲たちが、これまでの2会場やL.A.でのライブから得た経験でまた1つ成長したAqoursによって披露される。

 

『MIRACLE WAVE』で見事に5度目のロンダートバク転を決めた伊波さんに喝采を送り、ソロ曲パートでは大阪公演で歌えなかった高槻さんの伸びやかな歌声に安堵し、不意に訪れた『HAPPY PARTY TRAIN』に大いに盛り上がり。

その後、今までの公演ではMCのみだったSaint Snowがアニメでは終ぞ叶わなかった『DROPOUT?!』の披露をしてみせ、会場を大いに沸かせた後ーー時間は来た。

 

画面に映るのは、物語終盤のダイジェスト。

セットリストは基本的に変わっていない。次に来るのは間違いなくあの曲だろう。

動悸が早まる。

ここに来てまた、「やっぱり黙っておいた方がいいのでは」と言い始める自分がいる。

単なる弱気、というのとはまた別の理由で。

 

僕は、埼玉公演に向かうバスの中でTwitterを始めたいと考えていた。

そして、この公演が終わった後に準備を整え、本格的に着手しようと思っていた。

その時、「言わない」ことを選んでいた人たちとはもう話せないかもしれない。

無礼で、身の程知らずの人間と見なされてしまうかもしれない。

言いさえしなければ、他の点では意見が同じだから仲良くなれるかもしれないのに。

 

でも、言わないということは結局、自分に嘘をつくということに他ならない。

嘘の同調などきっと歓迎されないし、そんなもの全然サンシャインらしくない。

仕方ないんだ、僕は僕でしかなく、全く同じ思考の人間など存在しない。

自分で考えて、自分で導き出した意見を掲げて、それで拒絶されるならそれは致し方ないことだ。

そこは、諦めるしかない。そういうものだ。

 

この問題に直面したお陰で、僕は自分の考えていることに相対できた。

そして、拙いけれど自分で考えて自分の意思で選択を行うことが出来た。

大いに意味はあった。あとは、決めた通りに言うだけだ。

 

 

 

映像は、歩道橋のシーンに差し掛かっていた。

胸が高鳴り、口の中が乾いていく。

腕で隠しつつ、ブレードを青に変更する。

船が大好きなあの子の色ではなく、今だけはAqoursそのものの色として。

ふと視線を上げると、前方の座席に何人も足元に青のブレードを隠し持つ人が見えた。

 

(ーーなんだ、やっぱりいるじゃん)

 

嬉しかった。

もし周りに「10」と言う人間が1人もいなかったら、と不安を感じていたが杞憂だったようだ。

そうなると現金なもので、周りに負けない声で叫ぶぞ、と負けん気が湧いてくる。

 

1,2年生と3年生がそれぞれ道の先にある階段を駆け上がり、遂にカウントアップが始まる。

 

 

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「1!」

青を灯したブレードを構え、立ち上がる。

考え続けた思考の先に得た、僕の答えを掲げる為に。

決意と戒めを、他でもない自分の心に刻むために。

 

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「2!」

今まで僕は、ずっと誰かの意見を参照することばかりして来た。

心が疲弊しきっていた頃は確かにそうせざるを得なかったのかもしれない。

でも、僕はもう病気ではない。

 

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「3!」

だから、もう自分で考えて自分で決めるんだ。

自分で、自分の結論に従って走るんだ。

人の意見で心を繋ぐのはもう、終わりにするんだ。

 

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「4!」

鎖が軋む音がする。

今まで自分を繋ぎとめていた鎖が、立ち上がって飛び上がろうとする僕に引かれて軋んでる。

本当にいいのか、と問いかけてくるようだった。

  

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「5!」

「言わない」と言っていたあなた達は、僕をどう評するのだろう。

愚かだと言うだろうか。後ろ指を指し、理解出来ないと言うだろうか。

それでも、何度目を擦っても僕には、境界を容易く破って手を伸ばすあの英雄の姿が見えているから。 

  

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「6!」

だから僕は、その手を掴む。

傲慢と言われようと、事実それが見苦しい思い違いであったとしても。

これが、僕の見つけた答えだから。

  

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「7!」

これは誓いであり戒めだ。

これからも絶えず挑戦し続けると言う誓い。

遥か後ろであっても、10人目としてこの道を走り続けるという戒め。

 

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「8!」

僕は、Aqoursに命を救われた。

なら今度は、その命で輝こう。

彼女たちに比べればちっぽけな輝きだとしても、そうやって輝きを放つことが彼女たちへの恩返しになると信じているから。

 

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「9!」

意識が収束し、悩み苦しんだ全ての時間が僕の後ろで音を立てて燃え上がる。

蒼い燐光を放つその足跡は、途中で投げ出さずに最後まで考えきったからこそ得られた輝きだ。

もう迷いはない。軋む鎖を引っ張り、まっすぐ前を見て僕はーー

 

 

 

 

 

「ーーーー10!」

僕は、鎖を引き千切った。

 

身体が宙に浮き、真っ青な空に包み込まれるような感覚に陥る。

鎖という支えを失って宙を舞う感覚は、ちょっと寂しくてーーでも、清々しかった。

 

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Aqoursーー! サーンシャイーン!!』

心に残っていた濁りが蒼い燐光を放って消えていく。

透き通った心で掛け声をあげ、僕は自分の選択が間違いでなかったと確信した。

 

 

透明になった心で余さず曲を受け止めるべく、余分な思考や感覚のスイッチを落とす。

 

雲海の如きスモークの向こう、白鳥を想起させる衣装に身を包んだ9人が佇んでいる。

 

曲が始まる。大好きなあの曲が。

 

決勝で浦の星の名を刻み込むべく創り出した決戦兵器。

 

未来でも過去でもなく、ただ「イマ」という掛け替えのない瞬間を胸に刻む歌。

 

その「イマ」を積み重ね、広がる未来へと飛翔する決意を謳う歌。

 

Aqoursが辿り着いた、Aqoursだけの景色。

 

何もかもが蒼く染まった、輝きに満ちた新世界。

 

ーーWATER BLUE NEW WORLDが。

 

 

 

 

 

🕊✨

 

 

 

 

 

ホテルへと帰るバスの中、僕は伊波さんへのメッセージ書いていた。

完全にクリアな思考で存分に受け取ったWATER BLUE NEW WORLDの後、アンコールの際にMCにて彼女が言った言葉に熱を受けたからだ。

その感情を、ライブ直後の熱が冷めてしまう前に伝えたくて、急いでメッセージを書いた。

 

彼女は、「みんなも一緒に輝くんだよ?」と言ってくれたのだ。

そしてその後、

 

「一緒に輝く覚悟できてるかーーーー!!!!」

 

と、大きな声で呼びかけてくれた。

胸が熱くなった。

これだから貴女は、と思った。

本当に、心を熱くさせてくれる人だと思う。

 

この言葉は、僕の結論を肯定するものだ。

ただAqoursが輝く姿を見ているだけじゃない、その輝きを見た自分も輝く。

それは、何も大仰なことでなくて良い。

ちょっとしたことでも良い、日々の中で何かを前向きに変化させたり、挑戦してみたり。

そんな変化や挑戦を繰り返して、自分の人生を少しずつ前向きで充実したものに変えていく。

そうやって、世界と、現実と戦っていく。

 

それが、輝くってことなんだろう。

 

改めて決意を固める。

この後の8月は、Aqoursのライブやイベントが特にない時期になる。

何かを始めるなら、この期間がチャンスだ。

ここで以前からやろうと思って手を出せていなかったものを今度こそ始めよう。

 

ずっと前に場所だけ調べてそのままになっているフルート教室に連絡を入れる。

 

新しくTwitterのアカウントを作って、今度こそ見るだけではなく発信もする。

 

ブログを始めて、少なくとも精神病だった僕をAqoursと10人目の”みんな”が救ってくれた話を書く。

 

この3つをどうにか実現したいと思った。

これを全部実現したら、きっと「あの時より輝けてる!」と胸を張って東京ドームでAqoursに逢うことが出来る筈。

 

今までずっと踏み出せなかった一歩を、きっと今なら踏み出せると確信している。

だって、もう誓ってしまったのだから。「10」と、叫んでしまったのだから。

何より、Aqoursから受け取った莫大な熱が、この胸に息づいているから。

 

僕はきっと、やれるんだ。

 

 

 

 

 

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