月の裏側

行き場を無くした思考の末路

汝、宇宙を拓く流星


駆け抜けるシューティングスター
追いかけて星になる

星屑は歌う。
何度も裏切る自分、思うように動かない自分。
そんな不信と失意の中で、夜空に輝く光を歌う。

皮肉なものだ、と僕は思った。
流星とは、大気圏で燃え尽き消え去る塵が放つ輝き。
それを追うなんて。

だけど。
仮に流星がそのようなものだと知っていたとしてもきっと。
あの星屑は、流星を追うのだろう。

「ただ歌えることが幸せ」と語った無垢が剥がれ落ち、「勝ちたい」という熱が表れる。
その様を見て、そう思った。

聴覚の檻を脱し、鈍色の線で踏み留まり、無垢の境界へと辿り着き。
勝利を望み熱を放つその様は、もう無垢ではない。
勝利への欲求。強い推進力となり、同時に魂を濁らせ得る熱の塊を携えて。

それは、さながら身を焼き輝く流星のように。

星屑は──澁谷かのんは。
あの歌で追いかけた流星に、なったのだ。

(「ラブライブ !スーパースター!! #12 Song For All」感想)

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黄昏の君、鈍色の線


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「がっかりするんだよ。いざってときに歌えないと」
「周りのみんなもがっかりさせちゃうし、何より自分にがっかりする」
「そういうの、もう嫌なの!」

星に手を伸ばし、届かなかった者。
いずれその星を越えるであろう、まだ何者でもない人間が産声を上げる。

敗北し、喪失したまま現実を生きなくてはいけない痛苦の中で。
日が沈み切る前に。昼が夜へと切り替わる前に。
堰を切ったように溢れたそれは、自分への失望で窒息し続けていた人間の発する"産声"だった。

(「ラブライブ !スーパースター!! #01 まだ名もないキモチ」感想)

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綴る妄言境界越えて

こんばんは、月見です。

ご存知の方もいるかも知れませんが、当方ほんの少しですが小説なんぞを書いておりまして。

ええ、下手の横好きで物書きの真似事をさせて頂いております。

 

前回の記事で僕は、当分の間自分の行動指針を『物語を貪り、形を与える事』に決めました。

まあ大仰に書いていますが、要するに『触れたいと思った作品に片っ端から触れ、書きたいと思っていた話をできるだけアウトプットする』という事ですね。

 

そこで、ふと思い立ちました。

折角ならこれまでに書いた3つの小説の振り返りをここにまとめてしまおうと。

 

わざわざ記事としてこれを公開する理由はただ1つ。

ブログは読むよ、という方に読んでもらうためです。

 

小説というのは消化するにあたってそこそこ腰の重い媒体であると僕は考えています。

それなりの長さの文章を想像力を働かせながら読み続ける必要がありますから。

ですので、僕はこの記事に過去3作の要約した内容をオチまで書いてしまおうと思います。
リンクは貼っておきますが別に踏まなくても大体読んだに等しい感じになれます。

小説を読む気にはなれないし時間もないや、という方にもちょっとは知ってもらう為の足掻きですね。

 

本当はこれから書く予定の物語の案を書き出して逃げ道を塞いだりしたかったのですが、自由を愛しているのでやめました。何言ってんだ?

では、お時間ある方はお付き合いください。

万に一つ、リンクを踏んで本編を読んで頂けたりしたらそれは望外の喜びといったところであります。

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星と宙の狭間で

「ーーあんた、浮気してんの?」

 

背筋が凍った。

ある年の11月。会社の用事で東京に来たついでに実家に一晩泊まった翌朝のこと。

朝食の席で母が唐突にそう言ってのけたのだ。

 

「……え? な、何のこと?」

 

あり得ない話だ。

そもそも交際している相手自体ーー

 

「あんた、最近花丸ちゃんのスタンプしか使わないじゃない」

 

がくり、と机に突っ伏す。

してやったり、と言いたげなにやけ顔。

ああ、また一本取られたーーそんな、4thライブも間近な秋の朝に起きた一幕。

 

 

 

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PVを見ながら、ふとそんなことを思い返していた。

新曲のPVで堂々とセンターを務めるその子は、あの頃よりも大人びて、大きく見える。

 

そうだ。

あの他愛ないやり取りから少し、あの子について思索したことがあった。

この際だからここに書き記しておこうか。

 

大きな蝶の羽を背負って舞い歌う、物語を愛する我らが語り部

国木田花丸に関する、幾つかの小品を。

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二重輝虹の新世界

ーーやられた、と思った。

 

激しく船体が揺れる。

 

振り落とされそうになりながら何とか舵輪にしがみ付いて操舵するが、動きが鈍い。

 

轟音を立てて唸る風の束。

 

閃光と共に吼える雷。

 

飛来した他の船の残骸が突き破ったのか、帆には大きな風穴が空いている。

 

舌打ちをしながら天を仰ぐ。

 

帆船は、嵐の直撃を受けていた。

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レンズを下ろした視界の虹よ

こんばんは、月見です。

5thライブが着実に差し迫っている今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。

ライブ前というと、皆さん色々な準備をしていると思います。

 

大切な人へ宛てた手紙を認める人。

ライブに向けて記事や絵などを仕上げる人。

遠征のための手筈を整え、荷物を用意する人。

敢えて何もせず普段通り過ごすという人もいると思います。

 

さて、人それぞれ多種多様な準備がある訳ですが、僕は気付いてしまいました。

この5thライブを迎えるにあたって1つ、大きなやり残をしているということに。

 

そう、劇場版ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbowの振り返りをしていなかったのです。

我ながら何という遅さ。情けなさに涙を禁じ得ません。

しかし、恐らく劇場版の楽曲を中心に構築されるであろう5thライブを迎える直前に劇場版を振り返るというのもまた乙なものです。きっと。たぶん。おそらくは。

 

前置きが長くなりました。

今回はゆるりと劇場版のことを振り返っていこうと思います。

但し、例によって自分と作品を同期接続照合しがちなオタクですので、自分語りを多分に含みます。

また、目新しい考察等は専門外ですので行っていません。

 

ご容赦いただけるようでしたら、どうぞお付き合い下さいませ。

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