ピアノフォルテの女
僕は、桜内梨子のオタクです。
ライブでは基本的にサクラピンクのサイリウムを振り、グッズも彼女のものを購入し、部屋はそれらで満ちている。
食事をしようとしてメニューにタマゴサンドがあればそれを注文するし、淡いピンクや桜のモチーフが使われた小物を見つけるとつい手に取ってしまう。何を聴こうか迷ったら、取り敢えずピアノの目立つ曲を聴く。
外出したり旅行をしたりした際、何か綺麗な景色や建物を見れば「彼女はどう感じるだろうか」とか「どんな感想を言うのだろうか」と考え、繊細なアクセサリーや可愛らしい装飾品を見かけると「彼女に似合うだろうか」と考える。
しょっちゅう彼女の何かしらについて考えていて、精神が沈んだらその姿や声に癒されている。
そんな、所謂「梨子推しのオタク」の1人です。
では、「なぜ桜内梨子なのか」と問われたら。
「文句言っても、誰もやってくれないわよ」
僕は、このシーンで心を掴まれたからと答えます。
意外でしょうか。
もっとドラマチックなシーンも沢山ありますからね。
でも、事実として僕が心を掴まれたのはこのシーンです。
それまでふらふらしていた心は、このシーンを目の当たりにしたその日から一切揺れなくなりました。
それまでは、育ちが良くて繊細で、引っ込み思案なイメージだった彼女が、途端に強くて逞しい人に見えて。
その唐突に現れた逞しさに、僕はすっかり惚れ込んでしまったのでした。
繊細なようで、逞しい。
傷付きやすいようで、とてもタフ。
弱いように見えて、強い。
そんな、僕が好きなひとの話を少しだけ。
お付き合いいただけたら、幸いです。
🌸
ピアノフォルテ、という言葉をご存知でしょうか。
現在ピアノと呼ばれている楽器の、本来の名称です。
弱音(ピアノ)も強音(フォルテ)も自在に表現できることからこう名付けられたそうですが、僕はこの言葉が桜内梨子という人物の在り方を表現するのに一番適していると思います。
先ほど言った通り、彼女は繊細な外面の中に驚くほどの力強さを隠し持っている人です。
それは即ち、繊細な弱音の側面と力強い強音を併せ持っていると表現できます。
ピアノ奏者だから、という訳ではなく、その精神性の在り方を指して”ピアノフォルテの女”と僕は彼女を評します。
ただ、人によっては彼女の”強さ”に関してイマイチピンと来ない方もいると思います。
それはある種、仕方のないことです。
何故なら彼女の強さというのは、腕力や武力の強さとか、何を言われても傷つかず恐れない精神性とか、そういった分かりやすい強さでは無いからです。
寧ろ、そういう側面から見れば彼女は”弱い”と言えるでしょう。
ただし。
”弱い”からこそ”強い”のです。
弱く無ければ決して得られない強さを、彼女は持っています。
そしてその強さが、何もかもが脆弱な僕にとっては欠かせない支えとなるのです。
その”強さ”とは何なのか。
そもそも桜内梨子とはどんな人だったか。
彼女の特性について、ちょっと思案してみましょう。
🌸
①色で見る桜内梨子
カラーセラピー、というものをご存知でしょうか。
上下2色に分かれた液体の入ったボトルを直感で選び、その色に応じた暗号を解読することで対象となる人の性格や精神状態などを割り出し、分析する手法のことです。
中学生の頃、この手法を簡素化し、赤、ピンク、オレンジ、黄、緑、青、紫の7色で性格を分析する内容の本を読んで以降、僕はこれを作品に登場する人物に当てはめてその性質を色で分析していました。
では、梨子の二面性に関してこの思考方法で分析してみましょう。
カラーセラピーの考え方において、人の性格はパーソナルカラーとDNAカラーの2色で構築されています。
パーソナルカラーは、後天的に得た特徴や表向きの性格、DNAカラーは先天的に保有する特徴や潜在的な性格を示します。
パーソナルカラーが外側、DNAカラーが中身というイメージです。
あくまで僕の主観による判断ですが、梨子はパーソナルカラーがピンク、DNAカラーが黄であると考えます。
ピンクの人は、包み込むような優しさを持ち、細やかな気配りの出来る人。
その色のイメージの通り、女性的な感覚に富んだ”優しい”人です。
しかし、他者への依頼心が強かったり自信喪失をしやすいといった短所があります。
一方黄の人は、明るく社交的、論理的に物事を考える知的な人です。
情報収集が得意で、いつも神経を張り巡らせています。
ただ、神経を張り巡らせ過ぎて神経質になり、臆病になってしまうという短所があります。
梨子はかなりパーソナルカラーであるピンクの印象が強く出る人だと言えるでしょう。
別段カラーセラピーの知識が無くても、「梨子ちゃんを色で例えるなら?」と問われれば殆どの人が「ピンク」と口を揃えると想像できます。
実際、困難にぶつかって苦悩する千歌への寄り添い方や、色々言いながらも善子に付き合い面倒を見る姿からは、ピンクの特徴である面倒見の良さや母性的な優しさが見て取れます。
ファッションの面から見ても、かなりピンクを多用していますよね。
しかし、一方で彼女は現実的で論理的な発想を持っている側面があります。
2期3話において”9人を5人と4人に分断する”という、現実的に見て最適解と思われる案を真っ先に打ち出したのは彼女ですが、この辺りの偶に現れる現実的な思考は黄の人の要素が現れていると言っていいでしょう。
また、黄の人は頭が回り集中力が高く、完璧主義になりがちです。
それだけなら良いのですがそれが災いして神経質になり、酷く臆病になってしまうことがあります。
彼女が周囲の期待に押し潰されてピアノが弾けなくなったのは、十中八九この張り巡らせ過ぎたセンサーが重圧を過剰に感じ取ってしまったせいでしょう。
また、自分の完璧主義な部分で自分を追い込んでしまったという側面もありそうです。
ピンクも黄も、マイナスに転じた際は共通して臆病になり、自信喪失をします。
アニメ初期における彼女は正に、自分の持つ特徴のマイナス面が重なっている状態だったのでしょう。
しかし、内浦に引越してAqoursに出会った彼女は、徐々に心の傷を癒し、本来の自分を取り戻していきます。
最初はピンクの特徴である包み込むような優しさや細やかな気配りを取り戻し、千歌や曜に対してそれを発揮しました。
ピアノの挫折を乗り越えた彼女はその後、本来持っている黄の人の知性や明るさ、そしてユーモアまで獲得していったように思います。
突っ走りがちなメンバーに理性的な考えを与えブレーキとなり、沈んでいる千歌には冗談を言って笑わせて、善子の堕天使ノリにも乗っていく。
明るくて冗談好きな部分を見せられるほどに信頼できる仲間に巡り会えたと考えると、とても素敵ですね。
因みに、2色を合わせた”統合色”と呼ばれる色も存在します。
ピンクと黄の統合色はコーラルーー珊瑚の色です。
ご存知の通り、珊瑚は綺麗な水の中でないと生きていくことが出来ません。
また、外殻の内側が非常に柔らかくて繊細です。
重圧と緊張に満ちた東京の環境で色を失ってしまった彼女は内浦の温かく優しい海の中で色彩を取り戻しますが、この環境の変化を感じ取る感性の繊細さは正しくコーラルのそれですね。
繊細であることは、敏感に痛みを感じ取ってしまう打たれ弱さにもなりますが、逆に人並み以上に世界の美しさを感じ取れるということでもあり、この感性の豊かさは彼女の長所です。
そして、この繊細が故に痛みに敏感であるという弱点があるからこそ、彼女は強さを得るのです。
②星座で見る桜内梨子
星座占いに関しては説明不要ではないかと思います。
考察がお好きな方々はとっくに考察済みの領域かもしれませんが、ラブライブの登場人物は星座の特徴を忠実に再現している人物がとても多いです。
現実において星座占いを信じるか否かは各々の信条にお任せしますが、少なくともラブライブに登場するキャラクターを読み解く上で星座は便利な道具となります。
先ほどの色と違い、解釈違いも生まれませんからね。
梨子の星座は”乙女座”です。
乙女座の特徴の一つとして”繊細な感受性”が挙げられます。
僅かな刺激にも鋭く反応する為、悲観的になったり自信喪失をしやすいという特徴……色の項で挙げたものと共通する特徴があります。
しかし、乙女座の人は潜在的に自分に対する絶対の自信を持っています。
乙女座の「自信が持てない」という状態は潜在的にあるその自信に対して現実の成果が噛み合わない状態、つまり現実的手応えのない状態です。
初期の梨子がどこか自信なさげに見えるのは、恐らくは本来の自分なら表現できたであろう曲が納得の行く形で表現できなかったことによる手応えの無さから来るものでしょう。
しかし、「海に還るもの」を千歌に肯定され、仲間たちの想いを感じながら舞台で改めて曲を弾ききったことで彼女は自信を取り戻します。
自信を取り戻すプロセスを見れば、「自信を喪失していたが、千歌に救われた」という話になります。
しかし、ここに辿り着くまでに彼女は沢山の選択をしています。
一度推薦入学した学校を抜けて、東京から内浦に引越して、海の音を探して、スクールアイドルになってーーそれらの行動原理の大半は「ピアノをもう一度弾けるようになる為」です。
つまり、ピアノを諦めずに果敢に行動し続けたからこそ、失敗を受けて尚模索を続けたからこそ、彼女はAqoursに出逢えて救われることが出来たと言えます。
始めから彼女は、ずっと足掻いていたのです。
大好きなピアノを、必ず取り戻す為に。
これが、桜内梨子の持つ”強さ”であると僕は考えます。
繊細で誰よりも傷付きやすく痛みを感じるのに、その痛みから何度でも立ち上がる強さ。
繊細で弱そうな印象からは想像できないタフさが、彼女の本質的な強さです。
これは完全に個人的な考えになってしまうのですが、僕は”傷付かない人”を強い人だとは思いません。
”傷付かない”というのは、強いのではなく鈍いだけだと感じます。
痛みを感じて受け止めて。それでも尚、それを乗り越えて立ち上がる姿こそが僕にとっては”強さ”だと思うのです。
繊細であるが故の強さ。
奇しくも乙女座の特徴と合致するそれが、彼女の本質を成す要素の一つと言えるでしょう。
③体型から見る桜内梨子
さて、ここまでの2つは占いやそれに準ずるものをキャラクターに当てはめる、考察というよりはある種のこじ付けになっていました。
どれも説得力に欠ける妄言のように感じた、という方も多いでしょう。
なので、最後にそういった要素を排した観点からもう一つ、分析をしてみます。
人間の体型というのは千差万別で、現実の人間の体型から読み取れるのはその人の生活習慣であったり職業であったり、どちらかと言えば後天的なものが多いと思います。
しかし、これが誰かが創造したキャラクターであった場合どうでしょうか。
キャラクターの体型には、そのキャラクターの役割や属性などの在り方が反映されるはずです。
例えば、日常的に運動をしている果南や曜は筋肉質で引き締まった体型になり、アメリカ人のハーフである鞠莉は肉感的でグラマーな体型になっています。
また、ルビィは意図的に幼さを感じさせる体型にすることで未熟さや頼りなさを印象付け、後に待っている爆発的な成長を際立たせるように意図されていると考えられます。
そういう観点で見たとき、梨子の体型における特徴は何でしょうか。
僕は、”上半身が華奢で骨盤が広い”ことだと考えます。
恐らく、多くの人にとって梨子の第一印象は「細い」とか「華奢」といったものでしょう。
しかしある程度彼女のことを見ていると、その第一印象の割に下半身が逞しいことに気付くと思います。
普段は比較的ボディラインの見えにくいフォーマル寄りな服装であったり、腰のラインを強調しない緩やかなラインのスカートを着用している(恐らくコンプレックスなのだと思います)ので分かりにくいですが、上半身の細さに対して腰から下がかなりしっかりしているのです。
しかし、鞠莉や果南のような「肉付きが良い」というタイプのものとは微妙に違います。
ルビィと比較すると分かりやすいのですが、上半身の華奢さは同じくらいなのにウエスト辺りから急に広がるようなボディラインをしています。
筋肉や脂肪などの外側の要因ではなく、これは”骨盤が広い”ということによるボディラインだと考えて良いでしょう。
骨盤が広いとウエストとの差異が広がるためにくびれが強調され、非常に女性らしい印象を与えると言われています。
恐らく、彼女に対して「よく分からないけど妙に色っぽく感じる」という印象を抱いている方がいたとしたら、それはこのボディラインの影響かも知れません。
女性的な印象を与える一方で、腰というのは文字通り体を支える要です。
歩くにしても立つにしても、踊るにしても演奏するにしても、腰は必ず支えとなります。
骨盤が広いということはつまり、それだけ安定したタフさがあるという事になります。
華奢で繊細な印象の上半身に対して、広い骨盤からなる逞しい下半身。
これは、彼女の”一見繊細で打たれ弱そうに見えて実は強か”という性質を反映してると考えられます。
そう、キャラクターメイキングの時点で既に彼女はそうデザインされていたのです。
実際、彼女は本編において目立って体力不足であるという描写はありません。
第一印象から言えばかなり運動が苦手そうな雰囲気ですが、割と練習もこなしています。
実際のところ、彼女は見た目よりも逞しいのです。
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まとめます。
桜内梨子は「優しく繊細で女性的な面と現実的で痛みに屈しない強かな面を併せ持つ」人であり、僕が彼女に惹かれたのはその強さです。
彼女は一見繊細な側面が目立ち、ともすると弱い人間であるかのように映りかねません。
しかし、彼女の本質はしっかりと現実に足をおろし、その上で繊細な感性を隠すことなく現実と闘い続ける強さを持っています。
そういった強かでしなやかな強さの微かな気配を、あの腕まくりのシーンから僕は感じたのでしょう。
優しい表情の下に、しなやかな強さを湛える強い人。
この二面性こそが、僕が彼女を好きでいる理由です。
センター争奪戦の選挙期間は、もう幾許もありません。
しかし、こうして与えられた選挙期間のお陰で、僕はこうして改めて好きな人への感情を見つめ直すことが出来ました。
これだけで僕にとって、この期間は有意義なものであったと言えます。
しかし、これだけで終わるのは惜しい。
僕は、あくまで彼女がセンターでその本質を咲き誇らせる瞬間を望み続けます。
彼女が桜色の世界の中心で、その繊細さも強さも余すところなく咲き誇らせる姿を。
そして、その二面性を存分に活かした楽曲を。
どうあっても願い続けるでしょう。
この記事を読んで、一票でも彼女に投票しようという気になる方がいたのなら、それはとてもありがたいことです。
逆に、読んで尚票は揺るがないという方も、僕は歓迎します。
僕は最後まで、あなたの敵であることを約束しましょう。
この選挙の末にどんな結果が待っているか、僕はまだ知りません。
でもきっと、どんな結果になっても彼女はこう言って微笑むでしょう。
「私ね、もしかしてこの世界に偶然って無いのかもって思ったの」
「いろんな人がいろんな想いを抱いて、その想いが見えない力になって引き寄せられて、運命のように出逢う」
「全てに意味がある。見えないだけで、きっと」
「そう思えば、素敵じゃない?」
僕は、この微笑みに、この問いかけに心から「そうだね」と答えたい。
だからこそ、結末に向かうまでの過程は本気のものでなくてはいけない。
全てを尽くしてぶつかって初めて、僕は偶然を運命で彩る権利を得るのだから。
今の僕が刻める熱は、ここに全て刻みました。
投票期間は残り僅か。
あなたが、この戦いを悔いのないものに出来ることを祈りつつ、筆を置かせて頂きます。
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参考文献
色の暗号:泉 智子(クレスト新社)
乙女座:石井ゆかり(WAVE出版)